京都市伏見区の「暮らしの歳時記」
伏見の暮らしを彩る様々な行事を新旧問わずご紹介します!
伏見の暮らしを彩る様々な行事を新旧問わずご紹介する「暮らしの歳時記」。
今回は、第一弾として毎年春に宇治川河川敷で行われる「ヨシ焼き」の取材に伺って来ました!
厳しい京都の寒さがひと段落し、少しづづ穏やかな春の陽気を感じるようになる3月初旬。
ここ京都・伏見では、春の訪れを告げる「ヨシ焼き」が今年も宇治川河川敷で行われ、まいぷれ伏見・編集部も参加して来ました!
「ヨシ焼き」とは、社寺の屋根などの材料として使われる「葭(よし)」を燃やす、日本の伝統行事です。
この地では、茅葺き屋根の工事やヨシの採取・販売を行っている「山城萱葺株式会社」(京都府城陽市)が長年行ってきました。
採取されたヨシが積み上げられています。
ヨシ焼きは、枯れてしまったヨシを焼却することで、立ち枯れを防ぎ、次の年のヨシの生育を促すために欠かすことの出来ない行事です。
ですが、道路に煙が立ち込めてしまったことが問題となってしまい、一時中断されてしまうことに。
しかし、縄文時代から続けられているとも言われる長い歴史を持つヨシ焼きは、ヨシの生育を促し、採取するだけでなく、さまざまな野鳥や動植物が生息するヨシ原の環境を守る大切な役割を担っていました。
その一つとして挙げられるのが、「ツバメの寝ぐら」。
なんと毎年夏には、約1万5000匹ものツバメが寝ぐらにするとも言われており、ツバメにとっても大切な場所でもあります。
遠くからも煙が立ちのぼっている様子を見ることが出来ます。
そして、このまま中断される状況が続くと、将来的につる性植物や雑草が増え、ヨシ原の豊かな生態系が消滅してしまう危惧が専門家によって指摘される声も挙がる中、そうした募る危機感に地元の市民団体「伏見楽舎」が中心となり、2012年6月、「伏見のヨシ原、再発見!」プロジェクトが発足、熱心な活動を通して、市民や行政への働きかけが実り、ついに2013年3月に再開されることになりました。
この日の取材のスタートは朝7時半。
京阪中書島駅に到着し、駅から歩くこと30分ほど、現地に近づくにつれて、宇治川の対岸からもうもうと煙が上がっているのが見えて来ます。
煙と炎に包まれた遠景に、思わず走り出してしまいそうな興奮をおさえながら、早足で現場に到着すると、既に現場ではヨシが勢いよく炎を上げ燃え盛っています。
ヨシ焼きの作業に携わる「山城萱葺株式会社」の皆さんは、なんと早朝6時から作業を開始されているとのこと。
安全面に最大限配慮しながら、炎を目前にしながら作業が進められます。
燃え上がる炎で包まれるその風景は、まるで映画のワンシーンに立ち会っているような驚きと美しさが入り混じる迫力のある圧巻の景色です。
テクノロジーの発達と共に、身近に炎を感じることの少なくなった私たちにとっては、火の持つ力強さや恐ろしさ、美しさを肌で感じることの出来る貴重な現場でもあります。
そして、忘れてはならないのは、ヨシ焼きの再開に携わった様々な人々の想い。
取材に快く応じて頂き、取材時にもヨシ焼きの歴史や想いを語って下さった「山城萱葺株式会社」の石井さん、現場にいらっしゃった「伏見楽舎」の皆様のお話しをお伺いする中で、燃え上がる炎に負けない、それぞれの心の内にある温かく、そして熱い想いに触れることが出来ました。
一時は中断の憂き目にあい、消えてしまったヨシ焼きの炎。
その消えた炎に火を灯したのは、この場所を大切にする様々な人々の熱い想いだと、取材を通して強く感じました。
そして、長い歴史や伝統も今を生きる私たち次第で、続くとも、終わることもあるのだと。
続けることの難しさ、そして大切さを痛感する取材でもありました。
私たちも、もっともっと様々な情報を発信していきたいと。
炎が鎮火した後は、まるで映画のワンシーンのような退廃的な美しさが漂っています。
私たち、まいぷれ伏見区もそうした地元の歴史や伝統が、情報発信を通して少しでも多くの人に広がっていくようにこれからも協力させて頂きます!
今回ご取材にご協力頂いた、石井さんをはじめ「山城萱葺株式会社」の皆さん、「伏見学舎」の皆さん、そして今回ヨシ焼きにお誘い頂いたADDress伏見の家守のまっさん、本当にありがとうございました!
では、また次回の暮らしの歳時記でお会いしましょう!
新生ヨシ焼き
開催時期 : 毎年3月の初旬から下旬(天候により開催日の変更有り)
参考URL : https://yamashiro-kayabuki.co.jp/8th_yoshiyaki/
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。